一人暮らしの女性を狙ってアパートに忍び込み、金品を盗み、命を奪う――。埼玉県川口市のアパートで昨年10月に26歳の女性が殺された事件で、強盗殺人罪で起訴された同市の配管工、清田龍也被告(39)は別の2件の強盗事件でも逮捕・起訴された。いずれも被害者は女性で、侵入経路はベランダ側の無施錠の窓。2件は同じアパート2階で、「上の階だから」という防犯のすきを突かれた。
 |
「入りにくく、見えやすい場所かどうかを意識して」と話す小宮教授=埼玉県川口市内で |
 |
|
■隣棟からジャンプで侵入
強盗殺人と強盗の現場となった2階建てアパートは、川口市の幹線道路沿いにある。防犯に詳しい立正大の小宮信夫教授(犯罪社会学)と現場を歩いた。
淡いオレンジ色の壁に、れんが風タイルがあしらわれたおしゃれな外観。ほぼ同じ造りの4棟が並ぶ中の1棟で、事件は起きた。昨年10月の事件後、現場アパートの大半は空き部屋になっている。
ここで起きた二つの事件で清田被告は、無施錠だった2階ベランダ側の窓から侵入したとされる。各戸の玄関は補助錠付き。1階の窓にはシャッターが備えられていた。一方で、2階の窓にシャッターはなく、各戸の窓にかぎがかかっているかどうかは、ガラス越しに、レバーの位置で一目で分かった。
県警によると、強盗殺人の侵入経路を、清田被告は「向かいのアパートからジャンプした」と供述したという。現場の2階ベランダと、向かいの棟の2階廊下との間は約2メートルで、清田被告のように身軽で高所作業に慣れた配管工ならば、簡単に飛び移れる幅だろう。
引き続き別の強盗事件の捜査が続く清田被告は無施錠のベランダからの侵入が「専門」という。アパート2階を選んだのは、助けに来ても、玄関かぎを閉めたまま、ベランダから逃走できるからとみられる。
小宮教授は「身軽な人なら雨どいを伝ってもベランダに登れる。2階以上でも油断は禁物」と指摘した。
■専門家 「防犯意識持って」
警察庁の統計で、06年の侵入犯罪(強盗、窃盗、住居侵入)は計23万8000件。うち9割を占める侵入窃盗の経路で最も多かったのは「窓」の9万3000件、次に「玄関」の5万件だった。防犯には、玄関ドアに補助錠を付ける「ワンドア・ツーロック」や窓用シャッターが有効とされる。
川口市の同じアパートでの二つの事件では、防犯のすきを繰り返し狙われ、1人が命を失った。
住宅を借りたり買ったりする際、交通の便や間取り、日当たりは気にするのに、防犯は後回しになりがちだ。就職や進学が集中する春先は、現地を見ずに契約、ということも多い。
春の引っ越しシーズンを控え、小宮教授は「親の保護を離れ、近所づきあいも希薄な20~30代の独身男女は防犯に無関心になりがち。自分は狙われているという意識を持つことが大事」と話している。
清田被告は標的の部屋を選んだ理由を「女性用下着の洗濯物があった」と供述している。小宮教授は「女性の場合は男性用の下着を干すだけでも犯人へのプレッシャーになる」と指摘する。